「パーソナルコンピュータの父」Alan Kay 論文発表50周年記念シンポジウム開催

2022年8月21日(日)、「Global Digicon Salon 020 


〜あらゆる年齢の子供たちのためのパーソナルコンピュータ」の歴史的意義〜」を開催しました。
こちらが当日の記録映像です。
最初にモデレータの髙木利弘が、今から50年前の1972年に「パーソナルコンピュータの父」Alan Kayが発表した論文「A Personal Computer for Children of All Ages(あらゆる年齢の子供たちのためのパーソナルコンピュータ)」が、いかに世界を変えたかを解説。もし、この論文がなければ、MacintoshWindows 95iPhoneiPadも存在しなかった。そして、Alan KayDynaBookはまだ完成していないと言っているが、それはどういうことか? 私たちはAlan Kayをどう継承していったらいいか? といったについて議論をしていきたいと述べました。次いで、現在もAlan Kayと一緒に仕事をしているCroquet Corporation共同設立者の大島芳樹さんが、3Dメタバース空間でリアルタイムでプログラミングできるCroquetは、Alan Kayの思想を継承したものであること。Alan Kayの卓越性は、パーソナルコンピュータを「本」に例え、単なる道具ではなく新しいメタメディアであると考えていたところにあると指摘。続いて、Smalltalkファンであり、アマチュアGUI史・オブジェクト指向史研究家の鷲見正人さんが、Altoが10〜15年先取りしたハイスペックの「タイム・マシン」で、その上でSmalltalkで、思うぞんぶん「未来のパーソナルコンピュータ」を想定したGUIオブジェクト指向言語の開発実験をしていたことなど、暫定的DynaBook開発秘話について詳細に解説。元『日経パソコン/日経MAC』編集長の林伸夫さんは、Alan KayApple Fellow時代にPraygroundのプロジェクトを進めていて、それが現在のiPad版Swift Playgroudsにまで繋がっていること。Alan Kayが、今やハードウェアの完成度は高いが、サービスがまだできていないと指摘していたこと。2100年ごろに本物のコンピュータ革命がやってくるだろうと予言していたことなどを紹介。テクノロジーライターの大谷和利さんは、「UXの文脈で考えるAlan Kayの功績」という観点から、論文の歴史的意義を解説。Apple Fellow時代にUX(ユーザー体験)という言葉を発明したDon Normanは、しばしば同時期、同じApple FellowだったAlan Kayと対立していた。Don Normanが優れたUXを確立すれば、誰もが直感的かつ簡単に目的を達成できるようになると考えたのに対して、Alan Kayはユーザーが道具の持つポテンシャルを最大限に引き出して目的を達成できることを最も重視。とりわけ若年層のユーザーに与えるべき体験の重要性を説いていた。UXには、こうした視点が欠落している。最後に、髙木利弘が、日本を代表するメディア学者、故浜野保樹氏の『ハイパー・メディアギャラクシー』に書かれていた「コンピュータはコミュニケーション・アンプリファイアである。あらゆる業界はコミュニケーション業界である」というAlan Kayの言葉に触発され、人間社会をコミュニケーション・システムとしてとらえ、「コミュニケーション・アンプリファイア・システム」を設計するという発想で製品やサービスを開発することが重要ではないか? 実際にSteve Jobsが世界を変え、Apple時価総額一位企業にまで成長させることができたのは、この極意を会得していたからではないか? と述べ、これを「CAS(Communication Amplifier System)理論」と名付け、発展させていくことが、Alan Kayを継承するひとつのあり方ではないかという問題提起をしました。
以下は、関連URL、プレゼン資料です。
 
■A Personal Computer for Children of All Ages
 
■A Personal Computer for Children of All Ages(日本語訳)
 
■IT 25 · 50 Symposium “Alan Kay Keynote(日本語字幕付)
 
■プレゼン資料_Presentation materials
01_220821_GDS020_ AlanKay50th_Presen_P.key.pdf
 
02_220821_GDS020_Alan Kay_Ohshima Yoshiki.pdf
 
03_220821_GDS020_Alan Kay_Sumi Masato.pdf
 
04_220821_GDS020_Alan Kay_Hayashi Nobuo.pdf
 
05_220821_GDS020_Alan Kay_Otani Kazutoshi.pdf
 
これまでのGlobal Digicon Salonの記録はこちらにあります。
■ITday Japan