1/10(日)「Global Digicon Salon 007〜THE THINKERS 2021」開催

2021/1/10(日)「Global Digicon Salon 007〜THE THINKERS 2021〜What should we learn from "THINKERS" in 2021?(2021年、我々は“思想家”たちから何を学ぶべきか?)〜」を開催。スティーブ・ジョブズをはじめ、1960年代〜1990年代、既存の政治経済体制に疑問を持ち、反抗し、その反抗のエネルギーをカウンター・カルチャーやパーソナルコンピュータ、インターネットといったIT革命へと結実させていった“思想家”たちの足跡を振り返り、コロナ禍の今、私たちは彼らから何を学ぶことができるのか? について考えました。 その記録映像は、こちらにあります。↓
■210110 Global Digicon Salon 007 The Thinkers 2021 ALL

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ゲストとして、写真誌『FOCUS』に創刊から関わり、米国で澎湃と沸き起こったカウンター・カルチャーとIT革命を世界で唯一、網羅的に激写してきた写真家・メディアプロデューサーの小平尚典さんと、代表作『世界の中心で、愛を叫ぶ』が300万部を超える大ベストセラーとなり、国内小説単行本最多記録を保持する小説家の片山恭一 さんのおふたりをお迎えし、語り合いました。
小平さんは、昨年末から、寺田倉庫が天王洲にオープンしたアートカフェ「WHAT CAFE」でポートレイト写真展「THE THINKERSを開催していましたが、1/7(木)の「緊急事態宣言」発令にともない、開催中止を余儀なくされてしまいました。
「Session 1 COVID-19 & Think Different」では、コロナ禍を脱出するには、倒産寸前のAppleに戻ってきたジョブズが行ったように、まずは無能なリーダーを一掃すること。そして、「コロナも経済も」を実現できる「Think Different」なアイデアを次々と実行していくことだという話をしました。
続いて、「Session 2 Counter Culture & Personal Computing」では、東洋経済ONLINEの「あの日のジョブズは① スティーブ・ジョブズ、今だからこそ語る伝説」( https://bit.ly/39o9638 )で片山さんが表現した「ジョブズの写真はいずれも雄弁で、さまざまなことを語りかけてくる。この雄弁さはジョブズに特有なものだ。例えばビル・ゲイツジェフ・ベゾスの写真には決定的に欠けている。」を受けて、米国東部の裕福な家庭に育ちカウンター・カルチャーとは無縁だったゲイツは、パクリと権謀術数によって世界一の大金持ちになっていったこと。それに対して、キリスト教イスラム教の対立という歴史的背景によって生まれてすぐ養子に出され、シリコンバレーブルーカラーの家庭で「自分はなぜ捨てられたのか?」と悩みながら育ったジョブズは、反体制、カウンターカルチャーと電子工作の両方にのめり込み、ヒッピー、LSD、インド旅行を経て、禅僧、知野弘文に出会って、初めて心の平安を得たこと。坐禅の正しい座り方である結跏趺坐の上にMacintoshを乗せ、鋭い目つきで正面を見据える写真が、2011年、ジョブズの追悼集会でも用いられた、ジョブズを代表する写真であること。禅は、キリスト教=体制である米国社会において、我々日本人が考える以上に、大きな影響力を持つ反体制、カウンターカルチャーのひとつとして認識されていたこと。そして、サイケデリックの導師ティモシー・リアリーが、LSDとパーソナルコンピュータが、ともに人間のイマジネーションを拡張するものであり、ともに反体制、カウンターカルチャーそのものであるという社会風潮を作ったことなどについて話しました。
「Session 3 Personal Computing History」では、ヴァネヴァー・ブッシュのMEMEXに啓発されてダグラス・エンゲルバートが1968年12月9日に行ったNLS(oN-Line System)のデモは、パーソナルコンピュータ、インターネット、両方のルーツであり、だからこそ「The Mother of All Demos(すべてのデモの母)/The DEMO)と呼ばれていること。そして、ダグの思想は、アラン・ケイDynabookジョブズMacintoshiPhoneiPadへと継承され、その結果、Apple時価総額世界一企業になったこと。ただし、ダグが掲げた「人々の知性を高め、知性を高めた人々が協力して人類が直面する深刻な課題を解決する」という理想は未だ実現していないことなどについて話しました。
そして、「Session 4 Why was Jobs able to change the world?」では、ジョブズが理想としていたのは、日本の伝統芸術「版画」を現代に生かした「新版画」であり、そのシンプルでエレガントな美しさ、余計なものを徹底的に削ぎ落とす美学が、ものすごいパワー、ものすごい経済的価値を生み出すということを、ジョブスは発見し、証明した。それに対して、我々日本人は、そうした素晴らしい日本の伝統文化を大切にせず、明治維新以降、むしろ破壊してきた。その結果、我々日本人は経済的にも文化的にも衰退に衰退を続けている。「シンプルでエレガントでエッセンシャル(本質的)」であること。それがものすごい大ヒットを生み出すという点では、『世界の中心で、愛をさけぶ』もまたそうした作品と言えるのではないか? ジョブズは晩年、3回も「テクノロジーリベラルアーツ(藝術)の交差点」に位置していることの重要性を繰り返した。それが「Heart Sing(心を歌わせる)」のだと。自分自身の、そして人々の心を歌わせるかどうか? それを基準にしてあらゆる製品やサービス、政治・経済・教育・文化を考えていくことが大切ではないかという話をしました。

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