11/21(土)「収束に2年以上かかった100年前のスペイン風邪大流行をCAS分析する」開催しました

 

2020年11月21日(土)10:00〜12:00「ジョブズ&アップル研究会 第4期②〜収束に2年以上かかった100年前のスペイン風邪大流行をCAS分析する〜」を開催しました。
今回取り上げたテーマは、「①100年前のスペイン風邪大流行をCAS分析する」「②日本人の衛生観念を高めた3人をCAS分析する」「③“常在危機”史観をCAS分析する」の3つでした。
「①100年前のスペイン風邪大流行をCAS分析する」では、スペイン風邪がグローバリゼーション、すなわち第一次世界大戦による大量の人の移動によって引き起こされたこと。船と鉄道、そして軍需景気、過密空間が感染を拡大させ、医療崩壊が起こったこと。国内死者数は50万人、感染率は43%に達し、国民全員が免疫抗体を持ったことで、ようやく収束したこと。収束まで3年かかったこと、などがわかりました。そして、今日、私たち日本人がマスクやうがいを普通にするようになった理由も見つかりました。当時の政府は、きちんと記録を残していて、その中に保健局が全国に配布した予防ポスターが膨大に残されていたのです。それらは、海外の文字だけのぶっきらぼうなものと違って、非常に親しみやすくわかりやすいイラストで、マスクの着用やうがいの励行を勧めていました。つまり、日本人のマンガ、アニメ文化、ビジュアル・コミュニケーション文化が功を奏していたわけです。まさにCAS(Communication Amplifier System)デザイン力が功を奏していたのでした。そして、当時の顕微鏡では細菌の100分の1の小ささのウイルスを発見することは不可能で、見えない敵と戦いながらワクチン開発が行われ、それが世論や政治家の思惑によって歪められていったこと。まさに、今日コロナ禍の中で私たちが体験しているあらゆることの原点がそこにありました。
「②日本人の衛生観念を高めた3人をCAS分析する」では、幕末から明治にかけて日本を襲った感染症と戦った3人の先駆者、緒方洪庵、長与専斎、後藤新平の功績についてCAS分析しました。江戸時代、人々は都市に密集し、毎年のように天然痘が流行るようになりました。適塾大村益次郎福沢諭吉など多くの人材を育成した緒方洪庵は、天然痘予防に牛痘接種が有効であることを知り、日本初のワクチン接種を実施。後に東京帝大医学部に発展していった神田お玉ヶ池の種痘所が富国強兵のための健康管理だったのに対して、適塾は民草のための健康管理を行っていた。適塾の塾生だった長与専斎は、岩倉使節団随行、「衛生」という言葉を発明。内閣府衛生局初代局長として、海外で流行していたコレラを検疫で防ごうとしたものの、幕末、諸外国と結んだ不平等条約を理由に外国船は検疫を拒否。西南戦争を終え、神戸に上陸した官軍の兵士たちも検疫官の制止を振り切って上陸。港湾を起点に瞬く間に日本中にコレラパンデミックが広がっていった。パンデミックで一番怖いのは、人間の無理解。長与専斎は統計を始め、統計によってパンデミックと戦おうとした。後藤新平は、1895(明治28)年、日清戦争に戦勝した20万人の兵士が一斉に帰国した際に、2カ月で大規模な検疫体制を確立。施設は未消毒と消毒済みにきちんと分離されていて、世界一の検疫体制と海外からも絶賛された。戦争で銃弾に斃れる者よりも疫病で斃れる者のほうが多い。後藤は後に台湾の民生局長となり、その優れた衛生管理が今日の台湾のコロナ対策の礎となったのでした。
「③“常在危機”史観をCAS分析する」では、『銃・病原菌・鉄』の著者、ジャレ・ド・ダイヤモンドのインタビュー『コロナ危機 未来の選択』を取り上げました。感染症が人類史に大きな影響を与えてきたこと、1531年、スペイン人のピサロが南米に持ち込んだ天然痘インカ帝国滅亡の大きな要因であったこと。ヨーロッパ人たちは、自分たちが免疫を持つ疫病を世界に拡散し、世界征服をしてきた。新型コロナは、過去に感染した人が誰もいない感染症で、免疫のあるなしではなく、貧富の格差が世界を分断している。ベトナムフィンランドはしっかりとした“常在危機”体制で感染を抑止、医療崩壊を防ぐことができた。新型コロナによって、世界が地球規模の課題解決(気候変動、資源の枯渇、乱開発、貧富の格差など)に向けて協力して行動しなければならないと認識することが大切。残された時間はあと2、30年しかない。世界が持続可能な軌道に乗らなければ、今の文明を維持することができなくなる。日本は、江戸時代、森林管理で世界をリードしていた。現在の日本は、そうした資源の持続可能な管理のノウハウを持っているのにもかかわらず、世界を主導する役割を果たしていない。イースター島の文明が森の乱伐で滅亡したのは、現代の我々のメタファー(隠喩)である。新型コロナは、人類滅亡の危機を脱出するために、世界が協力する最後のチャンスである。私たちは今、コロナ禍は3年間は続くであろうと覚悟し、“常在危機”史観に基づく新しい社会システムを世界中のみんなで協力して、早急にCASデザインする必要がある、という話をしました。

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次回、最終回となる「ジョブズ&アップル研究会 第4期③〜新型コロナ・パンデミック収束後の世界をCAS分析する(全体のまとめ)〜」は、明後日、11月28日(土)10:00〜12:00開催予定です。お申し込みはこちらからしてください。↓
コロナ禍の中、多くの国の政府は誤った政策を行い、最悪の事態を招いています。日本でも、GoToキャンペーンによって新型コロナ感染「第三波」を誘発し、経済を活性化させるどころか、税金を使って、わざわざ感染拡大火に油を注いでしまいました。ジョブズ&アップル研究会」は、こうした危機的な状況の今こそ、ジョブズの「Think Different」に学んで発想の転換をすべきだ、ということで8月から4期12回にわたって開催してきました。コロナ禍の中で、今、最も優れた提言をしているのは、世界的なベストセラー「サピエンス全史」の著者ユヴァル・ノア・ハラリです。「お金もまた人間が発明したストーリーに過ぎない。世界のお金の9割以上は、コンピュータ上の単なるデータである。新型コロナの危機の中、各国の政府は何も存在しないところから1200兆円を超えるお金を生み出している。各国の中央銀行は今、膨大な量の通貨を発行している。銀行が白い紙にお札を印刷すれば、国民は物が買えるようになると考える。これはサピエンスがフィクションを信じることで得られる力だ」。最終回では、こうしたユヴァル・ノア・ハラリの考えと対比する形で、「CAS(Communication Amplifier System)理論とは何か? どう実践していけばいいか?」を明らかにしていきます。ジョブズアラン・ケイの知見をもとに新しい動的システム理論に発展させた「CAS理論」。この「CAS理論」について、ぜひこの機会に学び、ご自身で考え、決断し、行動する糧としてください。