NHKサイエンスZERO「ヒトとイヌ 進化の歴史(ネオテニー共進化)が生んだ奇跡の関係」
イヌがヒトの気持ちを察することができるのは、イヌがオオカミのネオテニー(幼形成熟)として進化したからだ、ということを科学的に解説。冒頭、イヌと飼い主の心拍の波形が同期することを示す実験や、セラピー犬が病院で長期入院している子どもや、認知症の患者を劇的に癒す姿を紹介。ついで、その研究の歴史を、1950年代にソビエトのドミトリー・ベリャーエフ博士の行ったキツネの家畜化の実験に遡って紹介。おとなしい性質のキツネどうしを何世代にもわたって選択交配させ続けると、イヌのように人間になつくようになる。とはいえ、そのメカニズムが分かるようになったのは、近年の生命科学の発達によるもので、イヌ化したキツネは、コルチゾールという攻撃性ホルモンの分泌が減少し、別名愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンの分泌が増える。そして、脳の海馬で新しく生まれる神経細胞が倍増し、記憶や学習の能力が高まる。要するに、子ども化した脳は、人なつっこい性格になるだけでなく、新たなことを学び記憶していくことができるようになるのだ。このように子どもの特徴を持ったまま大人になることをネオテニーというのだが、イヌがオオカミのネオテニーとして進化する一方、実は、人類自体がサル(類人)のネオテニーとして進化してきたというところがミソ。子どもの感受性とか吸収力、協調性を保持したまま大人になるサルが人類なのだが、当然、大人になれば頭が堅くなり、融通がきかなくなくなってくる。好奇心が旺盛で、遊びが大好きで、おしゃべり好きというのが、本来、人間が人間に進化していく上で非常に大きな役割を果たしていて、人類は、攻撃性の高い性質の者を集団から排除し、協調性の高い性質の者を自己選抜してきたことで、豊かな社会を実現してきたという。