NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ「“根拠なき不安”を越えて」 がこれまでになく面白かった理由

1月1日に放送されたNHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ元日SP「“根拠なき不安”を越えて」 が、これまでになく面白い討論番組に仕上がっていました。
理由は、「第5回ホロス2050未来会議/ACCESSING」にゲストとして登壇いただいたGIFTED AGENT河崎純真さん(http://holos2050.jp/2017/11/24/1705_summary/)がミレニアム世代の若者の代表のひとりとして参加していて、次々と鋭い発言を連発していたからでした。
テーマは、昨年5月に公開され話題となった経済産業省次官・若手プロジェクトの「不安な個人、立ちすくむ国家」をもとに「“根拠なき不安”を越えて」 と題し、「不安」「絶望」「希望」の三部構成になっていたのですが、その中で、河崎さんの「不安の理由は孤独にある」「正しいものって何があるんですか?」「ルールにないことをやる」「ルール作ったっていいじゃないですか」「通貨も国家も全部幻想」「(自分は)良い社会を作りたいだけなんです」といった発言が光りつつ、残念ながら、ほとんど誰もついていけていない感じが、今の日本、今の若い世代の現状を見事に映し出していました。
取り上げられた発言数、発言時間からいっても、付けられたテロップの多さからいっても、ある意味、河崎さんの独壇場になっていたと言っても過言ではないでしょう。
それに比べると経済学者の安田洋祐氏は、冒頭、いきなり司会の古市憲寿氏から「あなたはエリートなんで“根拠なき不安”なんてないでしょう」といじられ、それに対して「僕にだって不安はあります。子育てとか健康とか…」と「おいおいやっぱりエリートじゃないか」発言をしたり、「この人、要するにゲーム理論でしか世の中見ていないのね」発言を繰り返していましたし、メディア史研究者の大澤聡氏も、「(不安には)社会的な不安と存在論的な不安がある」「昔からよくある図式」と言いつつ、「ダラダラ生きてく」という結論しか導けないなど、色々知識はあるけど、所詮、実社会経験の乏しい学者さんだよね、という印象しか残せませんでした。
そして、いつもマウンティング・ポジション・トークが得意な国際政治学者の三浦瑠麗氏は、「ねじ伏せるの好きじゃないけど」との発言をテロップにされる形でいじられ、結局、いつもの「国家・国防第一主義」のドグマから抜けられず、河崎さんの「ブロックチェーンアルゴリズムによって実現される世界像」「国家は数万になる」「要するに国家が中央集権化してきたのってこの150年ぐらいの世界像であってれからの世界像は分散化してくる」という認識にはついていけていませんでした。
ただ、それぞれの参加者が、自らの蛸壺から抜け出て、自分をさらけ出しつつ、自由に発言し、対話を続けていく、という番組を元旦そうそう放送できる日本というのは、まだ平和だなぁと思いました。
もしかしたら、来年、再来年、こうした放送ができなくなる日本になっているかもしれない。そういう漠然とした不安がよぎらなかったでもない「ニッポンのジレンマ」トーク番組でした。

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